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活動報告

金沢21世紀美術館 「路上、お邪魔ですか?」 コラボトークイベント

「誰がためのストリート? 歩くことから考える都市と大地の交わり/せめぎ合うところ」
2026/05/16 (土)@金沢21世紀美術館

26.09.26


もし「路上」を好きに使ってもいいと言われたら、何をしてみたいですか?

ストリートは、美術やカルチャーの文脈では、ときに制度の外側やイリーガルな実践と重ねて語られてきました。一方で近年は、ウォーカブルなまちづくりや道路空間の再編が進むなかで、「道」を人が過ごし、関わり、使いこなす公共空間として捉え直す動きも広がっています。

では、「路上」は誰のものなのでしょうか?行政がルールをつくる「道」なのか。表現や創造が立ち上がる「ストリート」なのか。それとも、地域の人びとが出会い、滞在し、関係を編みなおす「路上」なのか。

今回のトークイベントでは、政策としての道、ストリートカルチャー、地域社会という3つの視点を交差させながら、「路上」という公共空間のこれからを考えました。

ゲストスピーカーは、国土交通省 元道路局長として日本のウォーカブル政策の立役者である池田豊人・現香川県知事、ストリートカルチャーに精通するアーティストの中島晴矢氏を迎えました。そして、このイベントをファシリテートするのは、交通×まちづくりに関心をもつ30 代の面々「COMO×GOMO」。

「ストリート」と「道」という対立的に語られがちな視点を超え、「路上」をめぐる新たな可能性を考えました。


登壇者 | ゲストスピーカー

池田豊人 │ 香川県知事/元国土交通省道路局長

1961年、香川県高松市生まれ。東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻を修了し、1986年に建設省へ入省。以後、道路行政に長く携わり、国土交通省関東地方整備局道路部長、大臣官房技術審議官、近畿地方整備局長などを歴任。2018年には国土交通省道路局長に就任した。2022年9月より香川県知事。

中島晴矢 │ アーティスト

アーティスト。1989 年神奈川県生まれ。法政大学文学部日本文学科卒業、美学校修了。2019年より美学校「現代アートの勝手口」講師。近代文学・サブカルチャー・都市論などを補助線に、現代美術・文筆・ラップといった領域横断的な活動を展開。ユーモアとアイロニーを散りばめたアクチュアルかつ批評的な表現をミクストメディアで実践している。主な個展に「ゆーとぴあ」(WHITEHOUSE/2025)、「東京を鼻から吸って踊れ」(gallery αM/2020)、「バーリ・トゥード in ニュータウン」(TAV GALLERY/2019)、グループ展に「MEET YOUR ART FAIR」(寺田倉庫/2023)、「ART FAIR TOKYO」(東京国際フォーラム/2021)、「TOKYO2021 美術展」(TODA BUILDING/2019)、著書に『断酒酒場』(本の雑誌社/2026)、『オイル・オン・タウンスケープ』(論創社/2022)、掲載図録に『TOKYO 2021』(青幻社/2021)、『東京計画2019』(武蔵野美術大学出版局/2020)など。


当日のグラフィックレコーディング


当日の動画 | YouTube


ディスカッションポイント

基調講演 | 池田豊人


モータリゼーションによる駅前空洞化と人流の不一致

モータリゼーションの進展により、駅前などの中心市街地から人気が消え、郊外の幹線道路に移動が集中する一方、車は「個室の移動」であるため、交通量が増えても街の賑わいには直結しない。

「こもる生活」と「たまる空間」

コロナ禍で街から人が消えた経験は、将来の人口減少社会の疑似体験とも言える。デジタル化やAIの普及により自宅に「こもる」生活が増える現代だからこそ、人間本来の本能を満たすために、外に出て人に会い交流する「たまる空間」を街中につくることが不可欠である。

人が集まる空間の「安全」「美しさ」「楽しさ」

人が集まり、安全に楽しめる居心地の良い場所には、「安全」「美しさ」「楽しさ(ワクワク感)」の3要素が必要である。静岡市での歩行者空間化や高松・丸亀町商店街などの事例にみられるように、こうした要素を道路空間へ押し広げていくことが重要である。

道路法第1条の壁と「区間限定」による制度改革

従来の道路法第1条にある「通行の用に供する」という目的が、イベントやカフェなどの賑わいづくりの壁となっていた。「道路は通行するもの、道路法を読み直してきなさい」と拒絶された経験もあった。そこで、法律全体の目的を変更するのではなく、「特定の区間を限定する」ことで、「通行」だけでなく「賑わい(滞在)」も認める制度改革が実現した。

「道路は車のもの」という意識からの転換

法改正の際には反発もあったが、「いつの間にか道路は車のものという意識が浸透しすぎていた」のであり、道路を歩行者の空間として取り戻すことが必要であると考えた。

高松アリーナ周辺にみる道路空間の再編

高松駅近くの新アリーナ整備に伴い、周辺の4車線道路の一部を2車線に削減し、歩道を拡張した。土日には歩行者天国化することで、大規模イベント時にも駅とアリーナを安全につなぎ、一体感のある空間をつくっている。

道路空間を支えるハードとソフトの工夫

車道と歩道を一体に見せる舗装デザイン、三宮の持たれかかれるカウンターベンチ、植樹マスを活用したベンチなど、ハード面の工夫が必要である。一方で、車と歩行者が互いに空間を譲り合うための柔軟なルールづくりというソフト面も欠かせない。

クロストーク | 中島晴矢


都市計画の破綻が生んだストリートカルチャー

1970年代ニューヨークのサウス・ブロンクス(South Bronx)では、過度な開発と貧困層の強制移住、治安悪化による「ブロンクス・イズ・バーニング」と呼ばれる状況の中から、DJ、ラップ、グラフィティ、ブレイクダンスなどのヒップホップ文化が生まれた。行政の計画の成功が必ずしも面白い文化の誕生と一致するわけではなく、都市には設計不可能な「余白」や「ノイズ」も必要である。

路上における「無意味」の価値

路地裏文化、ハイレッド・センターによる過剰な路上清掃パフォーマンス、赤瀬川原平らの「路上観察学会」やトマソン観測、大道芸、行商の掛け声など、路上には一見「無意味」に見えるものが存在する。そうしたものに価値やユーモアを見出せることも、表現の場としての路上の魅力である。

クロストーク | 酒井聡佑 (COMO×GOMO)


「道」の語源と人間のサイズ感

日本において有史以前、陸上の移動空間は「地(ち)」と呼ばれ、天候悪化や獣からの安全を祈る畏怖の念を込めて「美(み)」を冠したことで「道(みち)」となったという説がある。もともと「道」は、人が歩く場所であり、人間のサイズ感を起点とした空間である。

パネルディスカッション | 池田豊人 & 中島晴矢 & 本橋仁 (金沢21世紀美術館)


「見通せなさ」と「たまり場」の心地よさ

モータリゼーション時代の一直線で広い道路とは異なり、見通しきれない奥深さを持つ「路地」や、歌舞伎町駒劇場前のような「通りから入ったどん詰まりの広場」、金沢特有のクランク状の広場「広み」には、人間のスケールに合った安心感と探索の楽しさがある。

路上園芸にみる、立場によって変わる快適さとルールの正義

無許可で路上に鉢植えを置く「路上園芸」は、個人の楽しみや景観づくりである一方、「観光客の車を住宅街へ侵入させないための住民側の防衛線」としても機能する。観光客、居住者、通行人、行政など、立場が変われば快適さやルールの正義も反転する。

「お膳立てされた自由」を超えた使い方の「発見」

会場からは「何でもやっていいぞという顔をしている道路はつまらない」という意見もあり、「自由にしてよい」とお膳立てされた空間よりも、植木のフチや段差など、利用者自身が使い方を「発見」できる場所の方が面白い。

「少しの迷惑」を受け入れる精神的な余白

SNSによる相互監視や過剰なクリーン化が進む現代では、路上で音を出すことや表現活動を行うことも「迷惑」として排除されやすい。だからこそ、「少しの迷惑やノイズを許容し合える精神的な余裕(寛容さ)」が必要である。また、「自宅以外で誰にも邪魔されずに1人で孤独になれる場所」が公共空間の中に確保されていることも、まちの豊かさにとって重要である。

1人で孤独になれる公共空間

都市の豊かさは、賑わいやイベントだけでは測れない。「自宅以外で誰にも邪魔されずに1人で孤独になれる場所」がパブリック空間の中に確保されていることも、豊かさの重要な指標である。

『路上、お邪魔ですか?』の「?」に込められた問い

都市の豊かさは、賑わいやイベントだけでは測れない。「自宅以外で誰にも邪魔されずに1人で孤独になれる場所」がパブリック空間の中に確保されていることも、豊かさの重要な指標である。


開催概要

日時:2026年5月16日(土) 17:00〜19:30
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
登壇者:
池田豊人(香川県知事/元国土交通省道路局長)
中島晴矢(アーティスト/ラッパー)
モデレーター:酒井聡佑(COMO×GOMO 共同主宰)
司会 本橋仁(金沢21世紀美術館、本展キュレーター)
主催:金沢21世紀美術館
共催:COMO×GOMO
協力:チームW・研修センター、社会福祉法人石川県聴覚障害者協会

〇 16:30–17:00 開場・受付
〇 17:00–17:10(10分) オープニング
〇 17:10–18:00(50分) 基調講演 │ 池田豊人(香川県知事)
〇 18:00–18:10(10分) 休憩
〇 18:10–19:20(70分) パネルディスカッション
〇 19:20–19:30(10分) クロージング